躊躇ためろ)” の例文
學問がくもんなく分別ふんべつなきものすらくわだつることを躊躇ためろふべきほどの惡事あくじをたくらましめたるかをあらはすはけだしこのしよ主眼しゆがんなり。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
そのうち女はもうどうにもならない様な中腰になってまで、しばらく躊躇ためろうていたが、ふと立って廊下の方へ出て行った。なりの高い頸の細い女であった。
性に眼覚める頃 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「よし。宗時殿さえ、そのお覚悟ならば、われわれの躊躇ためろうている理由はない。——では、やがて山木の目代邸に、火の手を見られたら、それと思し召されよ」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ハッと思って細川は躊躇ためろうたが、一言ひとことも発し得ない、とどまることも出来ないでそのまま先生の居間に入った。何とも知れない一種の戦慄せんりつが身うちにみなぎって、坐った時には彼の顔は真蒼まっさおになっていた。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)