跡取あとと)” の例文
跡取あととりの弟は糟谷かすやをばかにして、東京へきても用でもなければらぬということもわかった。細君の顔はよりはなはだしく青くなった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
復一が六年前地方の水産試験所を去って、この金魚屋の跡取あととりとして再び育ての親達にむかえられて来たときも、まだこの谷窪に晩春の花々が咲き残っていたころだった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
二人は二、三年前からの仲でしたが、若旦那の跡取あととりを奉公人のお徳と一緒にすることは、どうしても伊勢屋の隱居が許さず、到頭生木なまきを割いて、私が伊勢屋の嫁になつたのです。
其家そこなら知つてゐるが、男の跡取あととりはなかつた筈ぢやないか」
跡取あととりはまだほんの子供だといふ話を聞いて居たのでした。