貝殻かひがら)” の例文
旧字:貝殼
三人の王女は草の上にすわつて、ふさ/\した金の髪を、貝殻かひがらくしですいて、忘れなぐさや、百合ゆりの花を、一ぱい、飾りにさしました。
湖水の鐘 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
それと共に、花のない桜の木には、貝殻かひがらのやうな花がさいた。あけ方の半透明な光にあふれた空にも、青ざめたきんいろの日輪が、さし昇つた。
かちかち山 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
二、三ときまへ着せかへて貰つたよい着物は、潮と汗でぐつしよりれ、縫目にはいつぱい砂がはいつてゐた。ほそつこい白い足は、貝殻かひがらや小石の角で切られたのか、傷だらけであつた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
そこで真奈ちやんは、すぐ自分の応援してゐる甲虫の車をみんなはづし取つて、その代りに、自分の指にはめてゐたあはびの貝殻かひがらで作つたきれいな指環ゆびわをぬいて、赤い糸の端つこにむすびつけました。
かぶと虫 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
抵抗する事を知らない貝殻かひがらのやうな女が
漁村 (新字旧仮名) / 森川義信(著)
窓の外にはきら/\光る貝殻かひがらのやうな、うつくしい花が一ぱいさいてゐます。どうぞ一しよに来て下さい。さうすればわたしはあなたのお嫁さんになつて上げます。そして二人で楽しく暮しませう。
湖水の鐘 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)