豆相ずそう)” の例文
豆相ずそうの近国でこそ、北条殿の息女といえば、どんな深窓の名花かと、見ぬすがたを、垣間見かいまみにでもと、あこがれる若殿輩わかとのばらもあるが、佳麗な容色は
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
青年は死場所を求めて、箱根から豆相ずそうの間を逍遥さまよっていたのだった。彼の奇禍は、彼の望みどおりに、偽りの贈り物を、彼の純真な血で真赤に染めたのだ。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
しこうして彼はみずから江戸の咽吭いんこうたる豆相ずそう、房総沿岸を巡検じゅんけんしたり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
友だちといっても、豆相ずそうの郷土を共にするこの若い友のむれは、平家の公達きんだちなどのやっている恋のたわむれだの歌舞宴遊かぶえんゆうだのという生温なまぬるい青春をならおうとはしなかった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お兄さんの死は、形は奇禍きかのようですが、心持は自殺です。私は、そう断言したいのです。お兄さんは、死場所を求めて、三保から豆相ずそうの間を彷徨さまよっていたのです。奇禍が偶然にお兄さんの自殺を
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)