谷々やつやつ)” の例文
鎌倉中、谷々やつやついらかや町屋根は、遠く、ここらの小山小山も、秋の昼さがりを、からんとして、はぎ桔梗ききょうに、微風もなかった。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小町、若宮などの大路附近の邸はもちろん、遠くは七切通ななきりどおし、谷々やつやつの屋敷からも、やがて不時の召にこたえて出た大身たいしんたちが、ぞくぞく、柳営内の駒ツナギに下馬しては
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——天下の声に聴け。ときの外道は、執権どのをめぐって、鎌倉の谷々やつやつにこそみな住むわと、人のいうぞ。外道の手下てか小外道こげどうめら、多治見四郎二郎国長の矢さきを受けらるるものなら受けてみよ」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)