誹謗ひばう)” の例文
かくして人は、其処にゐる凡ての人々に対して大なる誹謗ひばうの声を挙げる事を敢てしないと共に、又多くの人々の期待を欺く事も敢てしない。
クラリモンド (新字旧仮名) / テオフィル・ゴーチェ(著)
其處ならいとはしい記憶からも、煩らはしい侵入からも——僞りや誹謗ひばうからさへのがれた安全な隱れ場所なのです。
按ずるに「言海」の著者大槻文彦おほつきふみひこ先生は少くとも鳥獣魚貝ぎよばいに対する誹謗ひばうの性を具へた老学者である。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
平生の談話、愁歎、誹謗ひばう罵詈ばり、辨難等の如き狹隘なる利害なり。叙情詩人はたとひ情感を歌ふといへども、そは公情なり。再現情感なり。主觀の影なり。主觀の映畫なり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
柔かき臥床ふしどは英雄の死せんことをねがふ場所に非ず。誹謗ひばう罵詈ばり、悪名、窘迫きんぱくたま/\以て吾人の徳を成すに足るのみ。見よ清教徒は失意の時に清くして、得意の時に濁れるに非ずや。
信仰個条なかるべからず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
あはれ侮蔑ぶべつや、誹謗ひばうをや、大凶事おほまがごと迫害せまりをや。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)