詐謀さぼう)” の例文
詐謀さぼう日和見ひよりみの偽装でこれまでようやく通って来た老臣たちも、すわと怖れをなし、あわれ主家は主家、彼らは彼ら、一夜のうちに御着を捨てて
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大坂城へ引き取ったのは詐謀さぼうであると言われるようなことが、そもそも京都方の誤解であろうと、なかろうと——あまつさえ帰国を仰せ付けられた会津を先鋒にして
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
七 事大小と無く、正道を蹈み至誠を推し、一事の詐謀さぼうを用ふ可からず。
遺訓 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
たとえ彼に多少の詐謀さぼうがあろうと、この軍勢をもって、この勝利の図にのせて追えば、何ほどのことやあろう。——敵の総帥を眼にみながら、これを
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
打ち割ってみせるのじゃ。乱世の武人の表裏と詐謀さぼうのむずかしさ、また人間的な苦しさ……。いま世の裏を教えるのじゃ。悲しまず、疑わず、落着いて聞け
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、個人間のあいだにも、殺伐な風や、詐謀さぼうや、油断もすきもならない道義の頽廃があった時代では、その各〻も、何よりは武技を身に備えておくことが、役だつに違いない。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何ぞや、権力、詐謀さぼう威嚇いかく、さようなものでこれをはばめ、その不滅の大御文章だいごもんじょうを、人類のうちから抹殺まっさつすることなどできようか。わろうべき人間の天に向ってするつばでしかない。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見よ、あの煙の下には、真の殺気はみなぎっていない。かれが詐謀さぼうたること明瞭だ。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)