診察みたて)” の例文
それを自分の診察みたてがいゝからなのだと穿き違へて、本当は藪医者であるのに気がつかないまでのことである。
唯円 (じっとしていられぬように庭をあるく)たちばな様の御殿医ごてんいのお診察みたても侍医のお診察みたても同じことなのだ。寿命のお尽きとあきらめられよとのお言葉なのだ。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「何んしろ永いからなあ。随分弱っているのさ。倉地さんの診察みたてじゃあこの冬までは保つまい、って話だ」
神楽坂 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
「天野北山は蘭医の大家、診察みたて投薬神のような人物、死ぬと云ったら死ぬであろう」弓之進も愁然と云う。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
うめき通してゐた。医者はいつものやうに叮嚀に診察をしたが、自分の診察みたての届かないところは、お世辞を使ふ外には仕方がないといふ事をよく知つてゐたので
「只今将軍家吉宗公、ご大病の身にございますれば、お診察みたてのほど願わしく、私よりも懇願仕ります」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
往時むかしから一札の値段は、医者の診察みたてと同じやうに兎角あやふやなものだが、病人に医者の診察みたてを信じるものがあるやうに、医者が一札を信じたところでそれに少しも差支さしつかへはない。