訥子とっし)” の例文
病鉢巻やまいはちまきをして出て来たところは訥子とっしを大柄にしたようで、顔の作りなども好く出来ているので、ちょっと見ては、外国人とは思えないくらいでした。
米国の松王劇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
安来節の踊や泥鰌どじょうすくいの流行ったのは大正になってからだろう。委しいことは知らない。その時分現在の松竹座は御国座という芝居で、沢村訥子とっしの一座がかかっていた。
浅草むかしばなし (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それは明治三十年から三十二年にわたる頃で、その一座は中村芝翫しかん、市村家橘かきつ、沢村訥升とっしょう、先代の沢村訥子とっし尾上おのえ菊四郎、岩井松之助などであった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
狂言は「有松染相撲浴衣ありまつぞめすもうゆかた」——有馬の猫騒動と「扇屋熊谷おうぎやくまがい」とで、小野川喜三郎と熊谷が訥子とっし、雷電為右衛門と扇屋上総かずさが照蔵、敦盛あつもりが源平、召仕お仲が鬼丸
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
九蔵の宗吾と光然、訥子とっしの甚兵衛とまぼろし長吉、みんな好うござんしたよ。芝鶴しかく加役かやくで宗吾の女房を勤めていましたが、これも案外の出来で、なるほど達者な役者だと思いました。
半七捕物帳:60 青山の仇討 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
千歳座は訥子とっし鬼丸きがん、猿十郎、源平の一座で第二流の芝居を興行し、中村座は荒太郎、仙昇、多見丸などの上方俳優で興行していたので、いわゆる大芝居は歌舞伎と新富との二座に限られた形で
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)