訃報ふほう)” の例文
岩倉家では丁度十四になる末から三番目の女を、阿母の実家にやる約束をして、其祝いをして居る所にお馨さんの訃報ふほうが届いたのだそうだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
旅で病むのは何と心細かったことだろう。それに私は貧しいかぎりであった。島村抱月先生のいたましい訃報ふほうを新聞で知ったのもその時であった。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
そして大正五年(?)の秋であつたか、或る日突然恒川の訃報ふほうを受け取つたのである。お通夜の晩に、私は彼の柩の前で久方振に萬龍夫人と言葉を交した。
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そうしてまだその日のうちに、うやうやしく心を打たれたひとつの世界が、かれの訃報ふほうに接したのであった。
「悲愴シンフォニー」の演奏を聴いた人々は、作曲者チャイコフスキーの訃報ふほうを耳にして、涙を流しながら銘々めいめいの家路に向った。それは一八九三年十一月六日のことである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
翌年先生の訃報ふほうを私はスイスのチューリッヒで受けとったのであったが、そのとき私はそこの山腹の下宿の高い窓から、呆然ぼうぜんとして町の向こうの青い湖水の面を見おろしながら
左千夫先生への追憶 (新字新仮名) / 石原純(著)
フョードル・パーヴロヴィッチは酔いしれているときに妻の訃報ふほうに接したが、いきなり往来へ駆け出すと、嬉しさのあまり両手を宙に差し上げながら、『今こそ重荷がおりた』と叫んだという。
外の同窓の訃報ふほうに接したよりは、いくらか驚きが強かった訳ですが、でも、彼は当時から、まるで自分の影の様な菰田に対して、彼等が余りに似過ぎている為に却って嫌悪の情を抱いていた位で
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
北の病翁びょうおうに如何にひびいたであろうか、と気にかゝらぬではなかったが、推移おしうつって居る内に、突然翁の訃報ふほうが来た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
新聞の訃報ふほうを読んだ日(二月二十五日)、四枚のレコードを聴いて、この稿を書いた。
彼が先妻のアデライーダ・イワーノヴナの訃報ふほうを、ペテルブルグから受け取ったばかりのころであったが、しかも彼は帽子に喪章をつけたまま、飲み歩いたり、醜態の限りを尽くしていたので
時に母親のことをたずねていたけれど、もうほぼ真相を察しているだろうと思ってソーニャがついに母の死を告げた時、驚いたことには、彼は母親の訃報ふほうにさえ大して動かされた様子はなかった。
芦田君の訃報ふほうをきいて、あの夕映えの運動場を、まず思い浮かべた。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)