覚束無おぼつかな)” の例文
旧字:覺束無
足の踏所ふみど覚束無おぼつかなげに酔ひて、帽は落ちなんばかりに打傾うちかたむき、ハンカチイフにつつみたる折を左にげて、山車だし人形のやうに揺々ゆらゆらと立てるは貫一なり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あらゆる諸大名の箭の的となり鉄砲の的となるべく、行末の安泰覚束無おぼつかなきことにござる、と説いた。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
私はといえば、実は、横浜へ上陸するや否や、たちまち寒さにやられて風邪をひき、それがこじれて肋膜ろくまくになってしまったのである。再び彼の地の役所に戻ることは、到底覚束無おぼつかない。
お貞は今思出したらむがごとく煙管きせるを取りて、覚束無おぼつかなげに一服吸いつ。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
明後日は猶重くも相成可申あひなりまをすべく、さやうには候へども、筆取る事相叶あひかなひ候間は、臨終までの胸の内御許に通じまゐらせたく存候ぞんじさふらへば、覚束無おぼつかなくも何なりとも相認あひしたた可申候まをすべくさふらふ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ほのぼのと狭霧罩さぎりこめたる大路のせきとして物の影無きあたりを、唯ひと覚束無おぼつかなげに走れるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)