見窮みきわ)” の例文
平次は死骸の横に廻って丁寧に拝んだ上、ザッと全部の様子を見渡し、それから恐ろしく念入りに部分部分を見窮みきわめて行くのでした。
人は愛を考察する場合、他の場合と同じく、愛の外面的表現を観察することから出発して、その本質を見窮みきわめようと試みないだろうか。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
子供と違って大人たいじんは、なまじい一つの物を十筋とすじ二十筋のあやからできたように見窮みきわめる力があるから、生活の基礎となるべき純潔な感情をほしいままに吸収する場合がきわめて少ない。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「庇の上に足跡があるか無いか、あの窓の格子が外せるかどうか、——それを見窮みきわめなきゃ、きめてかかるわけに行かないよ」
怖いものを見窮みきわめたいあの好奇心と同じような気持で、おぬいは今見た夢のそこここを忘却の中から拾いだそうとし始めた。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
大して聰明さうにも見えない、平凡そのものの娘が、捕物の名人錢形平次の先を潜つて、裏の裏まで物を見窮みきわめて居たのです。
かくて私達が太陽の光線そのものを見窮みきわめようとする時、分解された諸色をいかに研究しても、それから光線そのものの特質の全体を知悉ちしつすることが出来ぬと同様に
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
大して聡明そうにも見えない、平凡そのものの娘が、捕物の名人銭形平次の先を潜って、裏の裏まで物を見窮みきわめていたのです。
お鶴がそう言うまでもなく、お勝手の雨戸にも敷居にも、大きな傷のあることは、その間に家中を嗅ぎ廻っている、ガラッ八もよく見窮みきわめておりました。
「いや、仕掛けに変りのないことを見窮みきわめずに、東海坊は火を付けさせるものか。曲者くせものが穴にもぐり込んだのは東海坊が壇に登ってから枯柴に火をかけるまでの間だ」
そこで、せめては同じ町内に住んで、悪人の行く末を見窮みきわめ、倅が成人の上、故主に帰参のお願いするはずで、今日まで相待ったのじゃ。倅は当年七歳、あとせめて十年
番頭と八五郎の案内で牢格子のような外側を見窮みきわめたうえ、平次は離屋はなれの中に入りました。
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
梯子を掛けてそれを見窮みきわめた八五郎は思わず大きい声を出しました。
「工夫は良いが、曲者の姿でも見窮みきわめたのか」