見切みきり)” の例文
もう此上このうえ横浜はまに居たって、面白いことは降ってやしないよ。お前たちは苦しくなる一方だ。いい加減かげん見切みきりをつけて、横浜はまをオサラバにするんだ。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わきに、総井戸を埋めたと云う、扇の芝ほど草の生えた空地くうちがあって、見切みきりは隣町の奥の庭。黒板塀の忍返しで突当る。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
奥は生薬屋の方と続いているかも知れないので、一概に留守と見切みきりをつける訳にも行かなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
百貨店で呉服物見切みきりの安売りをする時、品物に注がれるような鋭い目付はここには見られない。また女学校の入学試験に合格しなかった時、娘の顔に現われるような表情もない。
寺じまの記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
お延は夫より自分の方がき込んでいる事に気がついた。この調子でしかかって行ったところで、夫はもうつぶされないという見切みきりをつけた時、彼女は自分の破綻ぼろを出す前に身をひるがえした。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)