裄丈ゆきたけ)” の例文
新らしいえり襟飾えりかざりを着けえて、余の枕辺に坐ったとき、余は昨夕ゆうべ夜半よなかに、裄丈ゆきたけの足りない宿の浴衣ゆかたを着たまま、そっと障子しょうじを開けながら
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
尋常の裄丈ゆきたけだけの簑笠が地上に引きずられているだけの相違で、以て身の丈の低い、子供にも見まほしき人物の一塊であることがわかります。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お庄は母親に頼んであるネルの縫直しがまだ出来ていなかったし、袷羽織あわせばおりの用意もなかったので、洗濯してあった、裄丈ゆきたけの短いかすりの方を着て出かけて行った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
玄武社は青年たちの自主的結社であって、十七カ条にわたるいさましい盟約があり、裄丈ゆきたけを一般より三寸短く裁縫した衣類を着るのと、頬髯ほおひげをたくわえるのとで眼立つ存在だった。
半之助祝言 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そうおもって見ると、翁がかずかずの著書は、いずれも明日のしたくを怠らなかったもので、まだ肩揚げのとれないような郷里の子弟のために縫い残した裄丈ゆきたけの長い着物でないものはない。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)