“袖姿見（てかがみ）” の例文
風呂敷には、もう一品（ひとしな）——小さな袖姿見（てかがみ）があった。もっとも八つ花形でもなければ柳鵲（りゅうじゃく）の装（よそおい）があるのでもない。単（ひとえ）に、円形の姿見（かがみ）である。
ピストルの使い方：――（前題――楊弓） (新字新仮名) ／ 泉鏡花(著)
袖姿見（てかがみ）は、瞳のごとく背後（うしろ）ざまに巨なる銅像を吸った。拳銃（ピストル）は取直され、銃尖（じゅうせん）が肩から覗（のぞ）いた……磨いた鉄鎚（かなづち）のように、銅像の右の目に向ったのである。
ピストルの使い方：――（前題――楊弓） (新字新仮名) ／ 泉鏡花(著)
うしろ向きになって、的の姉さんを袖姿見（てかがみ）に映して狙いながら、銃口（つつぐち）を、ズッと軽く柔（やわら）かに肩に極（き）めて、そのうしろむき曲打にズドンと遣るんだ。いや、肝を冷す。
ピストルの使い方：――（前題――楊弓） (新字新仮名) ／ 泉鏡花(著)