行住坐臥ぎょうじゅうざが)” の例文
新青年などの証拠品が、六郎氏の書斎の錠前つき本棚にあったこと、その錠前の鍵は一つしかなく、六郎氏が行住坐臥ぎょうじゅうざが所持していたことは
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
世人の重き宝を盗もうと思い、強い敵を打たんと思い、絶世の美人を得ようと思うものは、行住坐臥ぎょうじゅうざが、その事の実現のために心を砕いている。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
我等猫属ねこぞくに至ると行住坐臥ぎょうじゅうざが行屎送尿こうしそうにょうことごとく真正の日記であるから、別段そんな面倒な手数てかずをして、おのれの真面目しんめんもくを保存するには及ばぬと思う。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
点検してかかると云う事になると、行住坐臥ぎょうじゅうざがさえ容易には出来はしない。だからどうせ世の中は理想通りに行かないものだとあきらめて、い加減な候補者で満足するさ。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
行住坐臥ぎょうじゅうざが、すべてこれ道場である。そう自らを練ってきているうちに、かれの眼は、びいどろ細工のように、外の物は映しても、内のものは現わさなくなった。おそろしい眼だ。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
さだめて我々が行住坐臥ぎょうじゅうざがのだらしのないところを、いちいち実写にとどめて、後世にまで抜き差しのならないことにたくんでお置きなさる、我々はいつのまにか宗舟画伯に生捕られて
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
身体からだの局部がどこぞ悪いと気にかかる。何をしていても、それがコダワって来る。ところが非常に健康な人は行住坐臥ぎょうじゅうざがともにわが身体の存在を忘れている。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私から云えば全くありがたくない話だが事実だからやむをえないのである。私の講演を行住坐臥ぎょうじゅうざが共に覚えていらっしゃいと言っても、心理作用に反した注文なら誰も承知する者はありません。
現代日本の開化 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)