血気ちのけ)” の例文
旧字:血氣
手に辛夷こぶしの花を持っているが、ふっくらとした頬はそのはなびらよりも白く、走って来たために激しくあえいでいる唇にも血気ちのけがなかった。
春いくたび (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
肌理きめの細かい、それでいて血気ちのけのある女で、——これは段々あとになって分ったことだが、——気分もよく変ったが、顔が始終しょっちゅう変る女だった。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
看護婦が急いで行って、一足の紅緒べにをの草履を足元にそろへた。お葉は、慄へながら血気ちのけのないやうな、白い死んだやうな片足をそっと降した。
青白き夢 (新字旧仮名) / 素木しづ(著)
一つ部屋で、お傍にでも居ましたら、もう、それだけで、生命いのちも惜しゅうはござりますまい。まして、人間のしいなでも、そこは血気ちのけの若いやつでござります。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
がんと喚きながら進出すすみでたのは、老紳士とみせた警視庁の高野刑事課長だった。三人の外人は一瞬、紙のように血気ちのけを喪って、両手を挙げながら椅子からった。
亡霊ホテル (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
彼地あちらに行っても面白くないから、それで、またしても戻って来たのだが、斯うしていても、あの年齢を取った、血気ちのけのない、悧巧そうな顔が、明白ありありと眼に見える。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)