蟇目ひきめ)” の例文
実に非常の群集で、其処にツクノリと云う事があります、何う云う事かと聞きましたら、是は蟇目ひきめの法だと云う。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
三浦介はそのあやかしを鎮めるために蟇目ひきめの法を行なっているとのことであった。それを聞いて千枝太郎はすこし安心したが、衣笠に逢えないで帰るのがやはり心さびしかった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
人々はおそれ、おののいた。天狗てんぐの仕業ではないか、というので警固の武士を揃えた。昼五十人、夜は百人の武士が蟇目ひきめの当番と名づけて、毎晩、威嚇の音高らかに矢を射させた。
骨ぼそだが四肢は長く、人には引けない蟇目ひきめ(強弓)をよく引くほどなきたえもある。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けだし弓は昔時せきじにあつては神聖なる武器にして、戦場に用ゐらるるは言ふまでもなく、蟇目ひきめなどとて妖魔ようまはらふの儀式もある位なれば、金気きんき粛殺しゅくさつたるに取り合せておのずから無限の趣味を生ずるを見る。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)