蝋鞘ろうざや)” の例文
羅紗らしゃの筒袖羽織に野袴を穿いて、蝋鞘ろうざやの大小を差し、年は三十前後と思われるほどの若さを持っているのが、爽やかな声で言います
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
燭台の灯が明るくみなぎって、磨きぬいた床柱と、刀架けの蝋鞘ろうざやと、大岡様おおおかさまのひたいとを、てらてらと照らしだす。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
白献上の帯をしめて、細身の蝋鞘ろうざやの大小を、少しく自堕落に落とし目に差して、小紋の足袋たび雪駄せったを突っかけた、歌舞伎役者とでも云いたいような、二十歳はたち前後の若い武士が
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
着流しに蝋鞘ろうざやの大小を差した、すこしふとり気味の重々しいお侍である。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
鎧櫃の一方の隅に背をもたせかけて、胡坐あぐらをくみ、そうして、蝋鞘ろうざやの長い刀を、肩から膝のところへ抱くようにかいこみ、小刀は腰にさしたままで、うつむき加減に目をつぶっているのであります。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)