蘆雪ろせつ)” の例文
蘆雪ろせつらの筆縦横自在じゅうおうじざいなれどもかへつてこの趣致を存せざるが如し。あるいは余の性簡単を好み天然を好むに偏するにるか。(五月十二日)
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
蘆雪ろせつ庵の系統をひいているのか、池の汀に紅葉した白膠木ぬるでが一本あるだけで、庭木らしいものはひとつも見あたらず、夕風に揺れて動く朱の色が
西林図 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
余はまず天狗巌をながめて、次に婆さんを眺めて、三度目には半々はんはんに両方を見比みくらべた。画家として余が頭のなかに存在する婆さんの顔は高砂たかさごばばと、蘆雪ろせつのかいた山姥やまうばのみである。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
現に月樵の事について手紙をよこした人も、月樵が或時蘆雪ろせつと共に一日百枚の席画を画いたが日の暮頃に蘆雪はまだ八十枚しか画かないのに月樵はすでに九十枚画いて居つた。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)