薄々うすうす)” の例文
中には薄々うすうす感づいて沼南の口占くちうらを引いて見たものもあったが、その日になっても何とも沙汰さたがないので、一日社務に服して家へ帰ると
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
一代に何人かの男があったことは薄々うすうす知っていたが、住所を教えていたところを見ればまだ関係が続いているのかと、感覚的にたまらなかった。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
職に離れて以来の不如意を薄々うすうす知っていながら、まさかこれほどとも思わずにいた健三は、急に眼を転じてその人の昔を見なければならなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
愛之助は薄々うすうす事情を悟ることが出来た。なる程、これは品川の云う通り、一大椿事に相違ないと思った。彼の好奇心はハチ切れそうにふくれ上った。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
高村は畠違いへ踏み込んで来て牙彫の土を持っているなど悪口をいっていることも私は薄々うすうす耳にしている所である。
何を隠そう拙者も江戸表に居るうちにそのような評判を薄々うすうす耳に致しておるにはおったがのう。多分、そのような事を云い触らして名前を売りたがっておるのであろう。
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
先生に薄々うすうすその話をするとね、先生があの調子でりきみ返ってね、ナニ、お前たちを取り戻しに来るものがあるって? 有るなら有るように来てごらん、幾万人でも押しかけて来てごらん
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もっとも、キャラコさん自身も、心のどこかで薄々うすうす感づいていたのである。
薄々うすうすは知つてゐる」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
文代は薄々うすうす明智がいるなんて、うそぱちだと感づいていたけれど、さも気掛りらしく、尋ねて見る。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「左様でございますか。いや、薄々うすうすその儀は承って出かけましたんですが、一応はここの親方の方へ申し上げまして、親方の口から改めてあなた様のお耳へ入れるのが順かと、こう思いましたものですから」
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)