いや)” の例文
世間の眼は、ようやく、赤穂の遺臣の心根に猜疑さいぎを向け、かげ口、露骨なそしり、いやしみなど、冷たいものの中ではあったが
圭子は、夫人が酒場バーを嫌うのも、新子の身を惜しんでくれればこそと感激もし、またそんなに、夫人のいやしんでいる、バーに出ている妹の代りに、顔を赤らめながら
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
その看守の人は私をチラと見て、苦笑を漏らした。いやしむような眼色だった。ふだん神妙そうな顔をしている私がそんなれた口をきいたのをおかしく思ったのだろう。
その人 (新字新仮名) / 小山清(著)
道もなく水もない炎熱の沙漠で、この開拓者たちは、非常に苦しい生活に耐え、自然の猛威と戦った。この精神の一つのあらわれとして、「卑怯」をなによりもいやしむ気風が生れた。
ピーター・パン (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
(範宴少僧都があるいている)と、興味やいやしみのまなこがあつまってきて、彼の姿を見世物のように人が見に集まってきたかも知れないのである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人非人といい、廉恥れんちのない者を恥知らずとも犬畜生ともいって、鳥獣よりいやしむが、汝はまさに、その鳥獣にも劣るものだ。それでも南蛮の王者か。はてさて珍しい動物である
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)