蒼黝あおぐろ)” の例文
波のようにゆるく起伏する大雪原をふち取りした、明るい白樺の疎林や、蒼黝あおぐろい針葉樹の列が、銀色の雪の上にクッキリと濃紫こむらさきの影をおとし
下の方はまっ白な雲になっていることもあれば海か陸かただ蒼黝あおぐろく見えることもある、昼はお日さまの下を夜はお星さまたちの下をどんどんどんどんかけて行くんだ。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
雪の漆喰がボロボロに剥げ落ちて、赭茶化あかちゃけた石の瓦に偃松の古苔が蒼黝あおぐろく蒸している。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
ベルナアルさんはガチガチと歯の根を震わせ、冬の海の、煤黒色ビチュウムを混ぜたあの蒼黝あおぐろい顔をして入って来る。
葡萄蔓の束 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ふっと気がついて見るともう北極けんに入っているんだ。海は蒼黝あおぐろくて見るから冷たそうだ。船も居ない。そのうちにとうとう僕たちは氷山を見る。朝ならそのかどが日に光っている。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)