葦簀張よしずばり)” の例文
「そのな、焼蛤は、今も町はずれの葦簀張よしずばりなんぞでいたします。やっぱり松毬まつかさで焼きませぬと美味おいしうござりませんで、当家うちでは蒸したのを差上げます、味淋みりん入れて味美あじよう蒸します。」
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こりゃ何ですって、佃島つくだじまの弁天様の鳥居前に一人で葦簀張よしずばりを出しているんですって。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
利かぬ気の親仁おやじじゃ、お前様、月夜の遠見に、まとったものの形は、葦簀張よしずばりの柱の根をおさえて置きます、お前様の背後うしろの、その石磈いしころか、わしが立掛けて置いて帰ります、この床几しょうぎの影ばかり。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と月を見て立停たちどまった、山のすそに小川を控えて、蘆が吐き出した茶店が一軒。薄い煙に包まれて、茶は沸いていそうだけれど、葦簀張よしずばりがぼんやりして、かかる天気に、何事ぞ、雨露に朽ちたりな。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)