落々らくらく)” の例文
岩壁のところどころに谷間が暗い影をしずめ、噴火で押しだされた軽石が、雨風にさらされて白骨はっこつのように落々らくらくと散らばっている。
藤九郎の島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
この鍬を片手に提げると、池のまわりを一ぺん通り、西の方へまわって、松の大樹の落々らくらくたる間へ進んで行きました。この辺、数里にわたって、見渡す限りの武蔵野であります。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
日本人の度量どりょうは、太平洋よりも広いんだ、昔から日本人は海外発展にこころざして、落々らくらくたる雄図ゆうとをいだいたものは、すこぶる多かったのだ、この山田という人は通商つうしょうのためか、学術研究のためか
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
かすかに夕陽の光のさしこむ仄暗いあたりに、おぼろげに人のかたちをしたものが、渚に流れ着いた流れ木といったぐあいに落々らくらくと横たわっている。見る眼にもおどろしい眺めであった。
重吉漂流紀聞 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)