萩叢はぎむら)” の例文
袖垣そでがきのあたりの萩叢はぎむらを割って、ぬうッと、誰やら頬被ほおかむりをした男の影が、中腰に立ち、こなたの書院の明りに、顔をさらして見せた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
石燈籠へ灯がはいり、その裾の萩叢はぎむらを明るめている。ジーッと聞こえるのは虫の声、市中の騒動が影響してか、今夜は武蔵野客がないらしい。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
萩叢はぎむらの中に傘干す山の庵
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
静が、気がついてみると、初秋はつあき八月の風が萩叢はぎむらにふいていた。かさと杖とが手にあった。老母と共に鎌倉を立つ日であった。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
萩叢はぎむらの露万斛ばんこくたたへけり
七百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)