華客とくい)” の例文
それら寡婦かふのうち衣食に窮するままに、辺境守備兵の妻となり、あるいは彼らを華客とくいとする娼婦しょうふとなり果てた者が少なくない。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「知合ひといふ程ぢやありませんが、向柳原の叔母が、内職のお仕事のお華客とくいの一人で不斷から顏くらゐは知つてゐますよ」
それを見たお華客とくい先の大門通りの薬種屋の主人が、「これあいけない、富五郎さん、お前さんは水銀みずがねにやられたのだ、早速手当てをしなければ……」
優に一軒の華客とくいで商売になっているとみえて、仲間一組、足軽二組の顔ぶれは、ほとんどいずれも京極家の者らしい。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さうだよ。特別にあんたのやうなお華客とくいをみるときには入用だよ。どうしてあんたは顫へなさらんかな?」
華客とくい廻りは陽の出ぬ中、今日いまでも東京の魚屋にはそう云う気風が残っている。
善悪両面鼠小僧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかも傑作を欲しいという本当に目の開いた華客とくいの多いこちらでは、観音一つ彫らすのでも、念に念を入れさせ、分業物の間に合せではなくして、台坐も天蓋も
相生あひおひ町のお華客とくいで、三百八十兩、小判で受取つたのは巳刻よつ少しまへでした。
相生町あいおいちょうのお華客とくいで、三百八十両、小判で受取ったのは巳刻よつ少しまえでした。
源空寺門前という一町内には、床屋が一軒、湯屋ゆやが一軒、そば屋が一軒というようにチャンと数が制限され、その町内の人がそのお華客とくいで、何もかも一町内で事が運んだようなものであります。
「研賃を澤山貰つた口は無いか——、この店の一番の華客とくいは誰だ——」
「研賃を沢山貰った口は無いか——、この店の一番の華客とくいは誰だ——」