菖蒲園しょうぶえん)” の例文
老妓はすべてを大して気にかけず、悠々と土手でカナリヤののはこべを摘んだり菖蒲園しょうぶえんできぬかつぎをさかなにビールを飲んだりした。
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
菖蒲園しょうぶえんなども開いていて、遊山ゆさんの人の姿も見られました。小菅こすげの刑務所の見える堤に、遊山の人からは少し離れて、仰向けに寝て休みました。
わが師への書 (新字新仮名) / 小山清(著)
曳舟まで出て見ると、場末の町つづきになって百花園ひゃっかえんも遠くはない。百花園から堀切ほりきり菖蒲園しょうぶえんも近くなって来る。
向島 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
天気がいいので、堀切の菖蒲園しょうぶえんへいってみる。かえりに、浅草あさくさへ出て、映画見物。家へかえったのは午後十一時半だった。部屋の鍵をあけたとたんに、背後うしろから声をかけられた。
脳の中の麗人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わたくしはこの堀割が綾瀬川あやせがわの名残りではないかと思っている。堀切橋の東岸には菖蒲園しょうぶえんの広告が立っているからである。下流には近く四木よつぎの橋が見え、荷車や自動車の往復は橋ごとに烈しくなる。
放水路 (新字新仮名) / 永井荷風(著)