芸妓家げいしゃや)” の例文
町内の若い者、頭分かしらぶん芸妓家げいしゃや待合、料理屋の亭主連、伊勢屋の隠居が法然頭ほうねんあたまに至るまで、この床の持分となるとわきへはかない。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まもなくこのやくざ野郎のキリリとした旅姿が、宮川筋の芸妓家げいしゃやの福松の御神燈を横目ににらんで、格子戸をホトホトと叩くという洒落しゃれた形になっている。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「そういうわけだから、君はこの金でしかるべき芸妓家げいしゃやの株を買うようにし給え、それで余ったらば——」
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この「大船で一艘積出す、」というのが若い時からその男の癖だった。話の中に、一人娘は、七八ツの時から、赤坂の芸妓家げいしゃやへ預けてある、といったのも、そういえば記憶おぼえがある。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
芸妓家げいしゃや二軒の廂合ひあわいで、透かすと、奥に薄墨で描いたような、竹垣が見えて、涼しい若葉の梅が一木ひとき、月はなけれど、風情を知らせ顔にすっきりとたたずむと、向い合った板塀越に、青柳の忍び姿が
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)