芦間あしま)” の例文
すると、どこかで粋な漁歌ふなうたが聞えた。見れば芦間あしま隠れのの蔭から、ただ一人の漁夫が、こっちへ小舟をあやつッて来る。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
六二さしも伊吹の山風に、六三旦妻船あさづまぶねぎ出づれば、芦間あしまの夢をさまされ、六四矢橋やばせわたりする人のなれさををのがれては、六五瀬田の橋守にいくそたびか追はれぬ。
ぜひなく、さらに芦間あしまを漕ぎすすむと、やがてのこと、またもや人を小馬鹿にするような鼻唄が聞えた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
将門は、芦間あしまの岩に腰を下ろした。さすがに、豊田のたちから、馳せ通し、また、歩きとおしたので、少し疲れたものとみえる。渺茫びょうぼうたる大江たいこうの水を前に、しばし、行々子よしきりの啼く音につつまれていた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)