良平りょうへい)” の例文
良平りょうへいはある雑誌社に校正の朱筆しゅふでを握っている。しかしそれは本意ではない。彼は少しの暇さえあれば、翻訳ほんやくのマルクスを耽読たんどくしている。
百合 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
大阪あたりの娘らしいのが、「良平りょうへいさんよ」と云う。お新さんがお糸さんと顔見合わせて莞爾にっこりした。お新さんはそっと其内の椿の葉を記念の為にちぎった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
小田原熱海あたみ間に、軽便鉄道敷設ふせつの工事が始まったのは、良平りょうへいの八つの年だった。良平は毎日村はずれへ、その工事を見物に行った。
トロッコ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
良平りょうへいうちでは蚕に食わせる桑のたくわえが足りなかったから、父や母は午頃ひるごろになると、みのほこりを払ったり、古い麦藁帽むぎわらぼうを探し出したり、畑へ出る仕度したくを急ぎ始めた。
百合 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
翌朝よくあさ二人は約束通り、一しょに百合ゆりのある麦畑へ来た。百合は赤い芽の先に露の玉を保っていた。金三きんぞうは右のちんぼ芽を、良平りょうへいは左のちんぼ芽を、それぞれ爪ではじきながら、露の玉を落してやった。
百合 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)