腑分ふわけ)” の例文
この象を腑分ふわけしたら、どんな化物ばけものが飛び出すか知れたもんじゃねえ、御出役のこないうちに軽率かるはずみに象に手をつけるわけにはゆきません
「諸君! お欣びなされい! かねての宿願が叶い申したぞ。明日、こつヶ原で腑分ふわけがある! 腑分がある!」
蘭学事始 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
死骸がどういう処分を受けるかわからないが、処分するまえに、ぜひ腑分ふわけをしてくれるように頼む。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
玄白たちが小塚原こづかっぱらの刑場で罪人のしかばね腑分ふわけする時の緊張などを、先生は特徴のあるゆっくりした語調で説いて聞かせたが、あの最初の講義は、自分の前途を暗示し激励してくれているようで
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
まるで殺場の腑分ふわけ室のような光景を呈していた。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
われとわがからだの腑分ふわけをするように、真名女は自分の臆した心をどこまでも追いつめていった。
日本婦道記:笄堀 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
吟味聞役ぎんみききやくは、佐田遠江守さたとおとおみのかみ。審判役は手前があいつとめる。対決終了いたさば、石庵がお鶴の腑分ふわけをなし、両人吟味の実証をいたす。……勝をとったほうには、奉行へご褒美として時服じふくひとかさね
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)