腐木ふぼく)” の例文
これを一に腐刑ふけいともいうのは、そのきずが腐臭を放つがゆえだともいい、あるいは、腐木ふぼくの実を生ぜざるがごとき男と成り果てるからだともいう。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
国をあげて、外敵にそなえた日の防柵ぼうさくや石垣や乱杭らんぐい腐木ふぼくなどが、今も川床かわどこや草の根に見あたらなくはない。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『俺が鳴鏑を射込んだら、一人残らずそいつを射ろ。射ない者があったら叩っ切る』——で、或時猟に行った、そうしてヒューッ鳴鏑を射込んだ。ただ腐木ふぼくへ射込んだのであった。
沙漠の美姫 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あるところは、右にもたき、左にも滝、そして、渓流のとろちたおれている腐木ふぼくの上を、てんや、むささびや、りすなどが、山葡萄やまぶどうをあらそっているのをひるでも見る。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)