脇本陣わきほんじん)” の例文
半蔵さん、脇本陣わきほんじん桝田屋ますだやへ来て休んで行った別当はなんと言ったと思います。御召馬とはなんだ。そういうことを言うんですよ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「はい。伺いましてございます。脇本陣わきほんじんとやらで、たいそうお立派な御普請でございます。いつぞやも絵図面を見せていただきましてございます」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
荒れたうまやのようになって、落葉にもれた、一帯、脇本陣わきほんじんとでも言いそうな旧家が、いつか世が成金とか言った時代の景気につれて、くわかいこも当たったであろう
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
文中の去年の秋の出来事というのは、私や立原なんぞが一しょに暮していた追分の脇本陣わきほんじん(油屋)が火事になって二人とも着のみ着のままに焼け出された出来事のことである。
木の十字架 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
伊那でも有力な助郷総代を島田村や山村にたずねるのに、得右衛門はその適任者であるばかりでなく、妻籠脇本陣わきほんじんの主人として、また、年寄役の一人ひとりとして
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そのおりには隣宿妻籠脇本陣わきほんじん扇屋得右衛門おうぎやとくえもんから、山口村の組頭くみがしらまで立ち合いに来て、草山の境界を見分するために一同弁当持参で山登りをしたほどであった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
脇本陣わきほんじんで年寄役を兼ねた桝田屋小左衛門ますだやこざえもんと、同役蓬莱屋ほうらいや新助とは、伏見屋より一軒置いて上隣りの位置にむかい合って住む。それらの人たちをも誘い合わせ、峠の上をさして、一同朝靄あさもやの中を出かけた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)