胸釦むなぼたん)” の例文
田中氏は心持後に反りかへつて、胸衣チヨツキ胸釦むなぼたんいぢりながら「真理」を語つたあとの愉快さといつたやうな顔をしてゐた。
そして手早く胸釦むなぼたんを外して、シヤツを裏返したと思ふと、指先に何かちよつぴりつまむで左の掌面てのひらに載つけた。——よく見ると、会社の重役のやうに血を吸つて真紅まつかになつてゐるしらみなのだ。