老成ませ)” の例文
そして如何にも姉らしい情愛を示しつゝ、私をいたはつたり慰めたりかばつたりしながら、物馴れた老成ませた態度で案内して歩いた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
恵美は、いろんな外の事では、老成ませていたが、私が「残飯食い」であることや、シチョウユーソツが、一番ビリッこの兵隊であることなどは、知らなかった。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
そして、この言葉は、われながら大人になったものだと思うほど老成ませたものでありました。葛岡もこれに力を得たように、すべての事実を次のように語りました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と、老成ませた事を云って、中でも矮小ちびが、鼻まで届きそうな舌を上舐うわなめにべろんとる、こいつが一芸。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「殴るよ。じっさいお前は老成ませているね。口を利いているのを聞くと一人前だ」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
お附女中などにふれるので、民間の子弟よりも、早熟な傾向があるところへ、学問によって智恵づけるので、この「権現ごんげんさまのお孫さん」は、いったいに人なみ以上、老成ませていたようである。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
駄々だだで、それでいて老成ませ勝気かちきなところがあった。年は一つ上の八つだったと覚えている。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)