老妻ばばあ)” の例文
ところがいい塩梅に、うちの老妻ばばあが気をきかせてな、ほやほやの焼麺麭クニーシュにバタをつけたやつを卓子テーブルへだしたので、一座の衆は期せずしてそのまはりへと集まつた。
それからそれを受取つて冠つたのも知つてますものな。——ところがさ、うちへ帰ると突然いきなり老妻ばばあの奴が、「まあ、そんなに酔つ払つて、……帽子シヤツポは何うしたのです?」
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
うちの老妻ばばあが御馳走するピローグですよ! それがどんな素晴らしいピローグだか、ひとつお眼にかけたいくらゐで、いや砂糖、まるつきり砂糖のやうでな! そいつを頬ばりだすと
考へて見れば好いつらの皮さな。老妻ばばあを虐めて雞をしめさしたり、罎詰の正宗を買はしたり、おまけにうんと油を絞られて、お帰りは停車場まで一里の路をお送りだ。——それも為方しかたがありませんさ。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)