羽州うしゅう)” の例文
越州の三国みくにと、佐州の小木おぎと、羽州うしゅうの酒田とが、船箪笥を造った三港であることは前から聞いていた。だがうつる時が需用を消した。
思い出す職人 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
その初めは土津つちづ羽州うしゅう最上にあらせられし時幕領白岩の農民強訴ごうそに及びたる時、三十六人の巨擘きょはくを捕へて、糾弾もせず一時に磔刑に行はれ、それを
せいばい (新字新仮名) / 服部之総(著)
羽州うしゅう米沢よねざわの典薬勝成裕かつせいゆうが、御隠居上杉鷹山うえすぎようざん侯(治憲はるのり)の内意を受けて、一行十五人、深山幽谷に薬草を採りに分け入るという、その時代としては珍らしい計画が立てられた。
壁の眼の怪 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
『新編鎌倉志』には、江島の神宝蛇角二本長一寸余り、慶長九年うるう八月十九日、羽州うしゅう秋田常栄院尊竜という僧、伊勢まいりして、内宮辺で、蛇の角を落したるを見て、拾うたりと添状そえじょうありとて図を出す。
「なあにネ、そいつがついこないだ、羽州うしゅう羽黒山のふもとから出て来たというんでしてネ。ねやの睦言むつごとって奴も、なかなか呑み込めねえんで——おみいさまあ、また、ずくに来てくんろよ——と、来やがらあ——へ、へ、へ、へ」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)