繍眼児めじろ)” の例文
旧字:繍眼兒
柳浪先生の繍眼児めじろを飼ひて楽しみとせられしはあたかも余の始めて先生を見たりしその頃より始まりしなり。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「どうも済まねえ。なにしろ、この通り繍眼児めじろのおしくらだからね」と、定吉は鼻で笑いながら云った。
半七捕物帳:38 人形使い (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
貴婦人はその無名指むめいしより繍眼児めじろ押競おしくら片截かたきりにせる黄金きんの指環を抜取りて、懐紙ふところかみに包みたるを
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
光政は二三日ぜん鷹狩に出掛けた折、みちで食つた蜜柑みかんの事を思ひ出した。光政は繍眼児めじろのやうに口をつぼめて、立続けに三つばかし食つたやうに思つた。蜜柑は三つとも甘味うまかつた。
かつて語りけるは小鳥もいろいろ集めて見る時は日本在来のものは羽毛うもうの色皆渋しと。まことや鶯、繍眼児めじろひわ萵雀あおじの羽の緑なる、鳩、竹林鳥るりの紫なる皆何物にも譬へがたなき色なり。
一夕 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)