紛雑ふんざつ)” の例文
旧字:紛雜
彼の胸には、紛雑ふんざつした事件が、もつれ糸を整理するように、順々に、解けて行った。切れたところは結び、解けないところは、切り離して考えてみた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それも熔岩と砂礫の互層や、岩脈のほとばしりを露出して、整然たる成層美を示すところもあるが、多くは手もつけられないほど、砂礫や灰を放擲ほうてきしたようで、紛雑ふんざつを極めている。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
のぼさんと欲せしこと、一日に非ざりしも、南船北馬暖席にいとまなく、かつ二雪霜の間に集積せるところは、尨然ぼうぜん紛雑ふんざつし容易に整頓すべからずして、自ら慚愧ざんきせざるを得ざるものあり。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
発作的ほっさてきに、彦太は、帳場の中から突っ立ったりする事があった。だが、この紛雑ふんざつした世相のどこへ一体自分を投げこんだら正しいのか、彦太には、見当がつかない。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、ひと群れが、庭木戸から、押しもどって、どっと、雪が、まっ黒になるほど、紛雑ふんざつする。
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)