糝粉しんこ)” の例文
健康で赤黒くて、純粹ではあるが、充分意志も強さうな下女のお崎にくらべると、これはまさに、糝粉しんこ細工のお姫樣のやうです。
劇場の出方でかたや茶屋の若い者などは、休場中に思い思いの内職を稼ぐのが習いで、焼鳥屋、おでん屋、飴屋、糝粉しんこ屋のたぐいに化けるのもあった。
半七捕物帳:54 唐人飴 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それは糝粉しんこで二、三寸ばかりの粗末な人形を沢山作つて、盆のぐるりに並べる。その中央にはやはり糝粉の作り物を何でも思ひ思ひにこしらへて置くのぢやさうな。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
もしこれが百発百中糝粉しんこ細工のように人間の鼻を改造し得る迄に発達致しましたならば、それこそ副産物どころでない、仁術中の仁術と推賞しても差し支えないであろうと考えられます。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あらゆるいけないわるいことも、側からどんどんいことに変えられていくのだろう、まるで手品師てづましが真っ白なまま函へ入れた糝粉しんこ細工のふたとればたちまち紅美しき桃の花一輪とは変っているように。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「飛んでもない、十八になつたばかりで、糝粉しんこ細工のやうな綺麗な娘ですよ。お茶こそ汲んで出すが、小便なんか——」
この飴細工と糝粉しんこ細工とが江戸時代の形見といったような大道だいどう商人あきんどであったが、キャラメルやドロップをしゃぶる現代の子ども達からだんだんに見捨てられて
半七捕物帳:54 唐人飴 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ただ糝粉しんこ
下町歳事記 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
「十七になる出来たての糝粉しんこのような娘が、逆立ちをしようと言うんだから、こいつは江戸開府以来の見物みものでしょう」
「その晩、地主の清水和助の一人息子、清次郎という糝粉しんここさえたような息子が行方知れずになったんで」
糝粉しんこ細工のやうに綺麗だ——裏へ出て洗濯か何かして、腰を伸ばして家の中の妹と話をして、思はずニツコリしたところを、二三十間先から遠眼鏡で見た殿樣は
「その晩、地主の清水和助の一人息子、清次郎といふ糝粉しんここさへたやうな息子が行方不知になつたんで」
年は十九で色白で愛嬌あいきょうがあって、色っぽくて、糝粉しんこ細工のように綺麗だ——裏へ出て洗濯か何かして、腰を伸ばして家の中の妹と話をして、思わずニッコリしたところを
「へツ、あつしも呆れましたよ。糝粉しんこでこせえて紅を差したやうな滅法界可愛らしい娘が三人、何時殺されるかわからないと聞いちや、ヂツとしてゐられないぢやありませんかね、親分」
召使お滝——新たに雇入れられた妾のお滝は取ってようやく十七歳、こしらえ立ての糝粉しんこの姉様人形に、生命を吹込んだような清らかな娘でした。家は鎌倉町の本店裏の路地に挟まれた駄菓子屋。
銭形平次捕物控:245 春宵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)