粉韲ふんせい)” の例文
抽斎が本所二つ目の津軽家上屋敷から、台所町に引き返して見ると、住宅は悉くかたぶき倒れていた。二階の座敷牢は粉韲ふんせいせられてあとだにとどめなかった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
どこにどうしていても差支さしつかえはない。ただ楽である。いな楽そのものすらも感じ得ない。日月じつげつを切り落し、天地を粉韲ふんせいして不可思議の太平に入る。吾輩は死ぬ。死んでこの太平を得る。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)