築地河岸つきじがし)” の例文
築地河岸つきじがしの人通りの少いところへくると、急にスピードを落した運転手が、帽子とマスクを取りけながらクルリと私の方を振り向いた。
冗談に殺す (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お昼すぎから例年うちつれだって築地河岸つきじがし木魚庵もくぎょあんという料亭におもむき、親睦会しんぼくかいをかねた慰労の宴を催すならわしでしたから、右門もちょうど非番でございましたので
池内の車が止ったのは、築地河岸つきじがしのある旅館の門前であったが、門内に広い植込みなどのある、閑静な上品な構えで、彼等の媾曳あいびきの場所としては、誠に格好のうちであった。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ませ子さんも、清方きよかた画伯が「築地河岸つきじがしの女」として、いつか帝展へ出品した美しい人である。
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
暑さしのぎに銀座会館の裏から築地河岸つきじがしへと舟遊びに出ており、帰りの土産みやげに大黒屋で佃煮つくだにを買い、路傍の花売娘から、パラピンにつつんだ花を三束買って、客と別れて帰って来た。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
築地河岸つきじがしの原っぱが見える。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)