箆深のぶか)” の例文
額へ当れば額、頬っぺたへ当れば頬っぺた、縦に来た時は箆深のぶかに肉に食い入ろうというのだから、この矢面には向うべくもない。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
が、たつた一つ、わら屋根の頂點に、何處から飛んで來たか、蟲喰ひの稽古矢が一本、天矢そらが落ちて來た恰好に、箆深のぶかく突つ立つて居るだけ。
たかうすびょうの矢が一筋、颯然さつぜんと風を切りながら、ひとゆりゆって後頭部へ、ぐさと箆深のぶかく立ったからである。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
が、たった一つ、藁屋根の頂点てっぺんに、どこから飛んで来たか、虫喰いの稽古矢けいこやが一本、天矢そらやが落ちて来た恰好に、箆深のぶかく突っ立っているだけ。
まっさきに進んだ真木島まきのしまの十郎が、太腿ふともも箆深のぶかく射られて、すべるようにどうと倒れる。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
後で調べてみると、鷹の羽をいだ箆深のぶか真矢ほんやで、白磨き二寸あまりの矢尻には、松前の人々が使うという「トリカブト」の毒が塗ってあったということです。
後で調べて見ると、鷹の羽をいだ箆深のぶか眞矢ほんやで、白磨き二寸あまりの矢尻やじりには、松前のアイヌが使ふと言ふ『トリカブト』の毒が塗つてあつたと言ふことです。
松五郎の娘お駒、山の手一番と言はれた十九の艶姿あですがたが、無慙大地の上に仰向に倒れて、玉を延べたやうに美しい咽喉、少し左寄りの方へ、矢文を結んだまゝの矢が、箆深のぶかく突つ立つて居たのです。
松五郎の娘お駒、山の手一番と言われた十九の艶姿あですがたが、無慙むざん大地の上に仰向けに倒れて、玉を延べたように美しい喉笛、少し左寄りの方へ、矢文を結んだままの矢が、箆深のぶかく突っ立っていたのです。