窮乏きゅうぼう)” の例文
窮乏きゅうぼうもこうまでになると——これより下には落ちようはないという——肚のきまった自嘲が彼を落着き払わせていた。
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
創立の当時は財政に窮乏きゅうぼうしてその発達はすこぶる困難であったが、またそれを救治せんとて企てた梓君の事業計画はあたかも二兎にとを追うの観があったが
東洋学人を懐う (新字新仮名) / 大隈重信(著)
そのころを頂上にして日向一家は坂道を下るように窮乏きゅうぼうの中へ落ちていった。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
日本の戯曲家ぎきょくかや小説家は、——殊に彼の友だちは惨憺さんたんたる窮乏きゅうぼうに安んじなければならぬ。長谷正雄はせまさおは酒の代りに電気ブランを飲んでいる。大友雄吉おおともゆうきち妻子さいしと一しょに三畳の二階を借りている。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
窮乏きゅうぼうのどん底へ陥ってしまったのだとも云える。