空嘯うそぶ)” の例文
「きょうのおさかなはいきがいいね」と祖母は叔母に、空嘯うそぶいて話しかけた。……私の言葉が祖母の耳には這入らないかのように……。
「高山の林公が何を云つてやがるんだい」と空嘯うそぶいてゐたと云ふが、漱石先生などの眼からは、樗牛の空威張りがさぞや馬鹿げて見えたであらう。
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
畢竟ひっきょう、親の子のというは人間の私、ひろき天地より観るときは、おなじ世界に湧いた虫」と大判司は相手に負けないような眼をみはって空嘯うそぶく。
島原の夢 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これは満腔まんこうの敵意を、反っくり返った鼻と、山のごとくそびえた肩に見せて、万七の空嘯うそぶく前を通ります。
ただ、単に Par amourパーラムール(色ごととして)ならお相伴しますがね!】と、空嘯うそぶいていた。
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
漆紋うるしもんの、野暮ったい古帷子ふるかたびらの前を踏みひらいて毛脛を風になぶらせ、れいの、眼の下一尺もあろうと思われる馬鹿長い顔をつんだして空嘯うそぶいているさまというものは、さながら
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
すると町長は、俄かに笑顔を引込め、松吉のいったことが聞えぬげに空嘯うそぶいた。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
上方に向ひて空嘯うそぶく。
藤波は、手酌でぐっとひっかけておいて、驕慢きょうまん空嘯うそぶくと
顎十郎捕物帳:06 三人目 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
といって、きょろりと空嘯うそぶく。
顎十郎捕物帳:04 鎌いたち (新字新仮名) / 久生十蘭(著)