種物たねもの)” の例文
私は東京に来て蕎麦そば種物たねものをはじめて食った。ある日母は私を蕎麦屋に連れて行って、玉子とじという蕎麦を食べさせた。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「日清戦争前だったよ。物価がやすかったからね。蕎麦そばがもりかけ八厘、種物たねもので二銭五厘と来ている」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
一町ばかりを引っ返して、半七は小さな蕎麦屋の暖簾のれんをくぐると、徳寿は頭巾の雪をはたきながら、古びた角火鉢へ寒そうにかじり付いた。半七は種物たねものと酒を一本あつらえた。
半七捕物帳:09 春の雪解 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
わたしはガラスのフレームが百まい千八百フランもすることを聞いていた。植木や種物たねものべつにしても、五、六百もあるフレームをひょうがこわしたらなんという災難さいなんであろう。
十一時雑煮ぞうに。東京仕入の種物たねもの沢山で、すこぶるうまい。長者気ちょうじゃきどりで三碗える。尤ももちは唯三個。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
人間が贅沢になって来たせいか、近年はそば屋で種物たねものを食う人が非常に多くなった。それに応じて種物の種類もすこぶるえた。カレー南蛮などという不思議なものさえ現われた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)