磯貝いそがい)” の例文
内記はそうだと頷いた、「磯貝いそがいなにがし、三浦なにがしという者が、明国みんこく人から伝えられたのを、さらにくふうしたのだそうだが」
と見まわすと、この中では一番の年少者で眉目びもくの清秀な磯貝いそがい十郎左衛門が少し、青白い顔して、片手で腹を抑えていた。
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四五日前から板倉は中耳炎で耳だれがたまり、神戸の中山手の磯貝いそがいと云う耳鼻咽喉科へ通っていたが、一昨日になって乳嘴にゅうし突起炎を起したから手術しなければいけないと云われ
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
銀子の心はにわかに崩折くずおれ、とぼとぼと元の道を歩いたのが、栗栖の門の前まで来ると、薄暗いところに茶の角袖かくそで外套がいとうに、鳥打をかぶった親爺の磯貝いそがいが立っているのに出逢であい、はっとしたが
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
益斎は時に年三十二。妻磯貝いそがい氏貞との間に既に三人の子があった。伯は通称郁太郎いくたろう後に貞助また九蔵。名は監、字は文郁、号を毅堂きどうという。しかしこの年にはまだ十一歳の小児である。次は女子某。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
先に江戸表から来た村松喜兵衛や、片岡、磯貝いそがいなどから、この三名の消息はつたわっている。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
聞いても磯貝いそがいさんはこそこそと逃げてしまやはるし、鈴木さんも磯貝さんに遠慮してはるらしいて、はっきりしたことは云うてくれはれしませんねんて。敗血症とか、壊血病とか云うようなもんと違いますやろか
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
見ると、物頭並ものがしらなみ磯貝いそがい十郎左衛門、美男なので、晴れの熨斗目裃のしめかみしもがいとどよく似合う。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お供先の建部たてべ六、磯貝いそがい十郎左衛門、中村清右衛門などが、悄然として城内からそろって出て来た。若い磯貝十郎左衛門の瞼が、紅くなっているのを見ると、誰もが、はっと恐怖的な動悸どうきに打たれた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)