碁会所ごかいしょ)” の例文
旧字:碁會所
近所の碁会所ごかいしょのようになっている土蔵裏の二階で追従ついしょうたらたらの手代とでもこっそり碁の手合わせをしているほうがどんなにましだったか解らない。
質屋の暖簾のれんだの碁会所ごかいしょの看板だのとびかしらのいそうな格子戸作こうしどづくりだのを左右に見ながら、彼は彎曲わんきょくした小路こうじの中ほどにある擦硝子張すりガラスばりの扉を外から押して内へ入った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は蒲田が焼野原になるまで毎日碁会所ごかいしょへ通勤していた。しらみのうつる難はあったが、ともかく、私は、読書と、碁会所だけが生活で、たまに女とあいびきしたというだけだ。
魔の退屈 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
碁会所ごかいしょ。玉突屋。大弓所。珈琲コーヒー店。下宿。彼はそのせせこましい展望をのがれて郊外へ移った。そこは偶然にも以前住んだことのある町に近かった。霜解け、夕み、その匂いにはおぼえがあった。
過古 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
ぼくの収入がやや確定してきたので、母もなかのお針さん通いを止め、父も体のよい日は、横丁の隠居みたいに、近所の碁会所ごかいしょへ出かけたりして、この所まあまあ、家計は小康を得たようなものだった。