石板せきばん)” の例文
かうもくろんだので、私は、腰掛にずつと深く腰をかけ、さも計算にせはしいふりをし、顏を隱すやうな恰好かつかう石板せきばんを抱へ込んでゐた。
遊放の時間にも、私は多く、室の中で石板せきばんに絵を描いていたものです。友達から、「私の石板にも絵をかいておいて頂戴」と頼まれたのを覚えております。
ナイフで色々ないたずら書きが彫りつけてあって、手垢てあか真黒まっくろになっているあのふたげると、その中に本や雑記帳や石板せきばんと一緒になって、あめのような木の色の絵具箱があるんだ。
一房の葡萄 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
いつものように、ルピック氏は、テーブルの上で、りょう獲物えものを始末し、腸を抜くのである。獲物は、二羽の鷓鴣しゃこだ。兄貴のフェリックスは、壁にぶらさげてある石板せきばんに、そいつを書きつける。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
もう駄目だとさとつた私は、二つに割れた石板せきばん缺片かけらかゞんで拾ひながら、最惡の場合に處する爲めに、勇氣をふるひ起した。時は來た。
私は石板せきばんを手にしてむづかしい割算わりざんの答を出すのに困つてゐたが、茫然ばうぜんと窓を眺めた私の眼に、ちやうどそこを通り過ぎる人が見えた。